No.006 : 日本語で表現する(前編)/後藤知佳

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知っているつもりで実は知らない世界というものがたくさんあるんだな、と気付かされたインタビューでした。”詩・短歌”と聞けば、それがどういうものであるかを知らない人はいないはず。けれども彼女がお気に入りの世界を覗いてみると、そこには私達が知っていたはずのものは大きくかけ離れた、とても自由な表現があったのです。前後編に分けてそれをご紹介したいと思います。
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後藤知佳
東京出身。現在武蔵野美術大学にて基礎デザイン学科を専攻中。

ワタベカズキ(以下K) – 今日は僕の友人の後藤知佳さんに来ていただきました!よろしくお願いします。では毎回恒例なので、最初に自己紹介を。

後藤知佳(以下G) – 後藤知佳です。東京育ちで、武蔵野美術大学の基礎デザイン学科に通ってます。

木村彩人(以下A) – 4年生だから今年卒業なんだね。基礎デザイン学科ってどういう分野に進む人が多いの?

G – web系に行く人は少なくて。紙媒体のグラフィックが多いような気がする。広告業界行ったり、エディトリアルに行ったり。あと映像とかプロダクトに行く人もいるけど、そんなに多くないかな。やろうと思えば何でもできる学科だと思う。

A – 幅広いね。基礎デザインって思考を学ぶ感じなのかな。

G – そうそう。思考がしっかりしていないと良いモノは作れない、って考え方の学科だから。基礎工学とかと同じ意味合いみたい。

A – 良い学科じゃないですか。将来有望だ!(笑)

穂村弘 / 手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)

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A – そんな将来有望な後藤知佳さんが持ってきてくれたのが…。

G – 今までの文脈と全然関係ないんだけど、私、本が好きで今日は詩集を持ってきたのね。一冊目は穂村弘さんの「手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ) 」です。これは内容がすごいっていうよりも、穂村弘っていう人がこれを書いてるのがすごくて。この人、システムエンジニアをやっているおじさんなんですよ。
 
穂村さんは言葉のセンスが良い人で、他の詩集は綺麗な言葉を使っていたり、現代的な感覚で「普通に良いな」っていう歌も詠むんだけど。そんな人が突然出したのが「穂村さんにファンレターを出しまくる、手紙魔のまみっていう女の子」の設定で短歌を詠んで、一冊になってるこの本なのね。なぜかこの歌集だけぶっ飛んでるの。
 
まず、「手紙魔まみ」っていう存在自体がどこまでフィクションかわからなくて。最初はただのいちファンだった「まみ」が、次第に手紙の量がエスカレートしていって、手紙の宛名も「ほむほむ」みたいに親しくなっていく。上京してきた「まみ」と穂村さんが実際に会ったって後書きには書いてあるけど、どこまでが本当で、どこまでがフィクションかわからないっていう。

A – かなり強烈な臭いのする内容だね。けど何かそそる(笑)

G – まず、おじさんがこういうガーリーな短歌を詠みまくってること自体が、私は面白くて(笑)でも現代短歌では今一番きてる人なんだと思う。

A – 詩集ってあまり読んだことないから新鮮だなあ。普通の本だったら事故と思われるような編集もあって面白い。それが許される世界なのかな。今仕事で出版関係のことをちょっとやってるんだけど、実はその辺のルールに詳しくなくてさ。どこまでが良くてどこからがアウトなのかビクビクしながらやってるけど…これを見ると勇気づけられるよね(笑)

G – 挿絵を描いてるタカノ綾の絵も良いんだよね。日本で言う、いわゆる「可愛い」っていうのをわかりやすく描いてる画家として、よく村上隆の周辺の人として取り上げられることも多い人なんだけど。別に私もその人の絵が好きだったわけじゃないんだけど、「まみ」っていう存在をイラストとして落とし込んで本の上で一緒になってるっていう、本丸ごとの世界観が凄いなって思って。

ちょっと行きすぎてる変な女の子

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K – 表紙を見たときと、その後に中を読んだときのギャップがあまりないよね。表紙を見た段階で、衝撃というか…尖ってるなあと思って。そして中はさらに濃い。

G – 私とこの本との出会いは、どこかで中の歌を読んだのが先だったの。それで良さげな歌集だなと思って、本屋さんで探したらこういう表紙で。

A – 他の歌集をほとんど読んだことがないから何とも言えないけど、この本みたいな挿絵の入れ方って反則技っていうイメージがけっこうある。

G – そりゃあ、ほんとに。たぶんこれ出たときは短歌界は衝撃走ったと思うんだよね。こういう、少女になりきっておじさんが短歌を書くってこともなかったと思うし。

A – 割と身の回りから出てきたことが多いよね。日記的なものだったり。昔だったら俵万智とか。ああいうイメージが強い。

G – そうそう。穂村さんも元々はそういうのをいっぱい詠んでるんだけど。

K – 音楽の方の歌の歌詞でさ、男性の曲だけど女性の視点で書かれてるのってあるじゃない。それに近い感じがする。でも、こっちはただの女の子じゃないでしょ。恋愛してるOLとかじゃない(笑)

G – そう!ちょっと行きすぎてる変な女の子(笑)

A – 「出来たてのにんにく餃子にポラロイドカメラ向けてる…」っていう下りから浮かぶリアリティとか、相当キテる(笑)

K – でも穂村さん、いつもこのスタイルじゃないんでしょ。どうしたんだろう(笑)

A – 自分の理想の世界ってことなのかな。何か発散したかったのかも。

G – そこまでそうさせるってことは「まみ」が実際にいたんじゃないかとか、いろいろ考えちゃうんだよね(笑)

A – いろんな想像をかき立てるよね。これは面白いなあ。

(後半に続く)

2009.10.4 update

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