“5links”が埋める街の隙間

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単に折り畳み自転車を作ろうという発想ではなく、もっと根本的な都会における”移動”を考えるところから開発されたという新しい移動手段”5links”。初めて写真で見た時から、他と圧倒的に違う佇まいに、これは一体どういう考え方から生まれたものなのか、とても気になっていたのでした。今日は開発者の五百住守彦さんに来て頂き、実演を交えながら5linksの誕生について語って頂きました。

木村彩人(以下A) – 今日は「5links」という新しいプロダクトを開発された、五百住守彦(いおずみもりひこ)さんに来ていただきました。

五百住守彦(以下I) – 五百住です。5linksの開発をしました。

A – 今日はその、5linksについてたっぷりお話を聞かせていただきます。開発には6年を要したと伺いましたが。

I – そうですね。最初の1年くらいは、どういう形であれば電車やバスに載せやすいのか、という試行錯誤をしていました。それも合わせれば、もう足掛け7年になりますね。
私は元々学生の頃からロードバイクに乗っていまして、大田区の自宅から千葉の大学まで片道45kmくらい、約2時間をかけて通学していました。そうすると、朝6時に起きて9時の授業に合わせて家を出るんですが、当時は水泳部に所属していまして、その練習をやってしまうと自転車で帰る体力が残ってないんですよ。だから帰りだけロードを電車に載せて帰ったりもしていました。その経験が、今回の企画の原点かなと思います。

開発者の五百住守彦さん。

そもそも折り畳み自転車とは?

ワタベカズキ(以下K) – 5linksのお話を初めて伺ったときに、これは自転車に詳しい人が作ったものだなと思ったんです。僕がロードバイクに普段乗っていて、もし次に折り畳み自転車を買うとしたら、こういうものが欲しいと思い描いてた理想と5linksがぴったり合致したんですよね。

I – 実は、開発を始めた7年前にはママチャリ生活になっていたんですよ。自宅から駅までの2kmくらいの距離を乗って、駐輪場に停めて電車に乗る。そんな中で、電車に載せられる折り畳み自転車があったら良いな、という希望はあったんです。それで、折り畳み自転車を調べたんですが、今ほどバラエティに富んではいなかったんですよ。
折り畳み自転車は元々、イギリスのパラシュート部隊が背中に背負って降りて、特殊部隊として戦う、というところから生まれたんですね。なので、多くのものは背中に背負って邪魔にならない、もしくは小さく折り畳んで倉庫にしまう、という発想で、折り畳んだときには正方形になるようにデザインされてるんです。

K – 確かに、折り畳んだときに正方形になるものがほとんどですよね。

I – 日本の場合、自転車を電車に載せるのも、最初は地方の大会に出場するために競輪の選手だけが許可されていたんです。それが徐々に条件が緩くなって、僕たちの時代には袋に包んで(確か300円位)を払えば、都内の電車には乗れるようになりました。その後、袋に入れていればタダになった、という時代の流れがあるんですよ。
ですから、日本の折り畳み自転車も、袋に入れて背負って車内に持ち込む、という発想なんですよね。今でこそBromptonやBD-1といった自転車のように、荷台に転が付いていて、折り畳んだまま転がして運べる仕組みが付いているものもあります。けれど、あれもユーザーが不便だからと後付けで出来たわけですし。

A – プロダクトとシーンがしっかりとリンクしていなかった訳ですね。そうやって作り手と使い手の関係がぎくしゃくしてしまうことって、よくあると思います。

I – 自転車に限らず、古くは盆栽であったり、最近で言えばウォークマンだったり、日本人はモノを小さくしていく文化というのがありますよね。その中で、折り畳み自転車という分野でも、それをどういう風に活用しようかという試行錯誤はユーザーサイドには芽生えていたんだと思います。

日本特有の社会環境から生まれたプロダクト

K – 5linksは都市生活にこそフィットするプロダクトだと思うんです。僕は田舎で育ちましたが、東京と地方では移動に対する感覚が全然違っていて。毎日電車を利用する、しかし駅から自宅まではそれなりの距離がある、という人に最適だと思います。現状はそのニーズをママチャリが埋めている訳ですが。

I – そこもまた日本人の感性というのがあって、その生活環境にいた時に、例えば15分のところを健康のために歩けばいいじゃない、と考える民族もいると思うんですよ。そこを日本人は、朝の1分を惜しんで自転車に乗り、駅前に不法駐輪をして、電車に駆け込むわけです。そういう国民性なんですね。
また、電車が1時間に1本しか走っていないような田舎では、5linksはあまり意味がありません。もしくはイギリスやドイツのように高速鉄道網が発達していても、時刻表通りに電車が来なかったり、違うホームに電車が来たり、ということが日常茶飯事なところでも同様でしょう。
日本では、例えば山手線は必ず3分ごとに到着して、綿密なスケジュールに従って運行しているわけです。それも日本特有の風景ですよね。その環境があったからこそ、5linksが生まれたとも言えます。

A – 地方は道も広いし、建物同士も適度な距離感を保って建てられてるので、車も簡単に停められて便利じゃないですか。そういう点で東京は既にどうしようもなくなっていますよね。十分すぎるほど地下鉄も掘られているのに、移動に関する不整合感は満足に解消されていません。
僕の自宅がまさにそういう状況で、駅まで歩くと10分くらいかかるんですよ。歩くとちょっと距離があるんですけど、かといって駅前に駐輪場を借りて自転車に乗るのも微妙な距離なんですよね。そういう人、意外と多いのではないでしょうか。

K – 5linksが東京で生まれたのには、必然性がありますよね。

I – 東京はもちろんですが、大阪は大阪で、実は折り畳み自転車文化は隆盛なんですよ。東京(首都圏)の3分の1くらいの人口規模しかないんですが、東大阪というところに自転車の工場がけっこうたくさんあるんです。自転車のパーツを作るシマノと言う世界的に有名なメーカーも、大阪にありますしね。

A – 大阪の街って道路が真っすぐなので、走りやすいんですよね。恐らく。あと街同士の距離感が、自転車でのアクセスに適しているのかもしれません。一方通行の道が多かったりして、車も不便な場合が多いですし。

I – 電車やバスとリンクする使い方をする、こういう自転車は、やはり都市での使用に向いているということですよね。

K – 駐輪場の問題もありますよね。都市圏の駅前の駐輪場はどこもいっぱいです。だからこそ5linksのような自転車は助かります。例えばオフィスだったら、デスク脇まで引いていけば良いわけですから。

いろんな可能性を見ていきたい

A – 五百住さんとしては、こういう人に乗ってもらいたい、というような考えはあるんですか?

I – 先程も申し上げたように僕は元々ロードに乗っていましたので、僕が20代の頃でしたら、こういう自転車には必要性を感じなかったはずです。やはりその後のママチャリ生活が影響しているのかなと思います。なので、どういう方に乗っていただきたいと言うよりは、5linksを面白いと感じてくださる方が、どういう層の人々なのかを見ていきたいですね。
ある方に言わせれば、仕事先を周る際に有用だというお話も聞きます。もしくは先日郊外の小売店さんに伺ったのですが、そちらで購入される方はレジャー用途の方が多いそうです。使用用途は持つ方によって様々になると思いますよ。

K – もし5linksが東京で普及したとしたら、都心部での人の動線が変わるんじゃないかと思うんですよ。駅というポイント同士の間が埋まってシームレスになって、商業圏にも変化が出るのではないでしょうか。

I – 5links自体はただの自転車ですが、それに電動アシスト機能が付くかもしれませんし、セグウェイなどの未来的な乗り物がさらに普及するかもしれません。そんな中で、今後どういった形でシェアが広がっていくかは、いろんな可能性がありますよね。

インタビュー中に、折り畳みを実演して頂きました

K – 当たり前なんですけども、5linksって自転車なので、ほとんどの人が簡単に乗れるじゃないですか。自転車なので(笑) 僕はそこが意外と重要だと思っているんです。あとはこれも当たり前ですが、自転車なので人力…燃料がいらないという点は、様々なシーンでアドバンテージになると思います。

I – 将来的には、電動アシスト化できれば面白いと考えてるのですけどね。これは重量であったり、コンピュータ技術といった障壁がクリアできればぜひやりたいです。
あと、まだ正しい輪行の仕方をしていても、電車に自転車を載せていると怪訝な顔をする方がいます。電車に自転車を載せる、という行為が、そこまで認知されていないんですね。なので、5linksが普及して、それが社会において認知されていけば良いなあと考えています。

A – なるほど。今日は面白いお話を頂いてありがとうございました。
 
 
※今後KALENO.netでは5linksの実機をお借りして、実際に都内を回りながらレポートを掲載していく予定です。乞うご期待ください。

2010.3.1 update

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