No.017 : “何か”と”何か”の間で(後編)/レザイ美樹

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サザンオールスターズ、APOGEE、DJやついいちろうなど、多くの著名ミュージシャンの仕事を手掛けるアートディレクター、レザイ美樹さん。着実とデザイン業界で実績を積み上げる傍ら、2010年、初のイラストレーションによる個展「NEW ERROR」が表参道ROCKETにて開催されました。デザイナーが描くイラストは”アート”なのでしょうか?それとも”デザイン”なのでしょうか??今回は個展会場にてインタビューを収録させて頂きました。

(前編はこちら)

境界線なんてないのかもしれない

レザイ美樹(以下R) – いつも気になっているんだけど、デザインとアートって、なんで妙に対比させて語られるんだろうね。

木村彩人(以下A) – アートって、自分が完成と思った時が出どころじゃないですか。それに対して、デザインは自分以外の誰かが良いって言わないと、世に出ていかないですよね。個人個人で、そこに合う合わないがあると思います。そういう意味では、KALENOは前者に近いんですよね。僕たちが良いと思ったら、出て行くので。でもデザイナーの仕事の場合、普通それはありえないんです。

R – それに対してのストレスってないの? …なんか俺が質問してるけどいいのかな(笑)

A – どうぞどうぞ(笑) 確かに、それは無いとは言えないですね。

R – あるでしょ。デザイナーとして、クライアントより自分の方が、先が見えているっていう自負はあるわけじゃん。そのストレスとは、どう付き合ってるの?

A – それをKALENOで発散しているんですよ(笑)

R – あ、そうか。じゃあ今回のこの個展はKALENOと同じことなんだ(笑) 抑えきれないものを、どこかで出さないとおかしくなるじゃん? でもその一方で、こればっかりでも良くなくて、俺は今すごいデザインがやりたいんだよね。例えば、今回の個展の世界観をそのまま写真で表現したらどうなるか、とか。

A – 小学生の頃に漫画家を目指していたというお話は、アート寄りじゃないですか??

R – いや、あれは商業寄りなんだと思う。小学生の頃に、自分の中で未だにトラウマ的な一言を言われたことがあって。当時、親戚のおばちゃんに「美樹、絵上手いから(美術の)先生になりなよ!」って言われたのね。その時、強く「違う!」って思ったの。小学生ながらに、俺はこの道で食っていける才能があって、自分が書いたものが世の中に受け入れられるんだっていう意識が強くて。美術の先生に対して悪いイメージがあるわけじゃないんだけど、自分の意識とは違っていたから、妙に腹立たしかったのを今でも覚えてるよ。俺はそれで「食っていきたかった」んだよね。そういうの、ない?

K – 僕は音楽をやってますけど、例えば今よりもっとアヴァンギャルドなことをやる選択肢はあるんです。リズムもハーモニーも、開拓できる境地はいくらでもあるので。でも聴き手の顔を思い浮かべたら、それではないんですよね。やはり同世代の、特別音楽好きじゃない人たちにも楽しんでもらいたくて。

R – ワタベ君にとっての音楽の捉え方が、デザイン的なのかな。俺が昔レコード会社で働いていたときに、業界の人が、バンドの演奏を「それオナニーじゃん」って表現することがよくあったのね。独りよがりな演奏だっていうことなんだけど。でも、オナニーがすごい上手ければ、それはストリッパーとして成立するんだよね。それを見て、楽しむ人がいるわけじゃん。それが俺の中で、アートに近いイメージ。でも、そこで見ている人のことを意識して、彼らを喜ばそうとするオナニーはデザイン的になっちゃう(笑)
そういう行き来って、何歳になってもあって。デザインの仕事をしてるときにアートのことも考えるし、アートをやってるとデザイナーとしての自分を意識したりするんだよね。もしかしたら、そこに境界線なんてないのかもしれない。

「SHONEN STAR」

「私はブルーが好き」って思った子が、デザイナーになるジレンマ

A – アート的なことをしている人達って、ある意味すごく不器用なイメージがあって。「これしかできません!」みたいな。

R – 「これしかできません」の「これ」がとても強いんだよね。俺は、自分の器用なところがコンプレックスだから。
木村君って、デザイナーだけど写真も撮るでしょ。俺は、それを見て良いなって思う。趣味って言ってるけど、クライアントワークより、そっちの方が説得力が強い部分もあるんだよね。

A – 確かに、仕事の実績の紹介よりも、写真の話の方が盛り上がることは多いです(笑)

K – 動機が純粋なんですよね。やりたくて、やってるという強さが出てくる。

K – KALENOでのインタビューを通して思うんですが、クリエイターの方って、何かに対してのアンチテーゼを持っている方が多いんです。レザイさんはいかがですか?

R – そこは仕事でデザインをする人間としてはジレンマがあって。「私はピンクの洋服が好き」って小学生くらいの女の子がみんな言っている中で、「私はブルーが好き」って思った子が、将来デザイナーになるわけよ。でもデザイナーになって言われることは、「ピンクの洋服を作れ」ってことなんだよね。この矛盾って、なんなんだろうと思って。

A – レザイさんのイラストや僕の写真って、その例えで言う「ブルー」なんじゃないでしょうか。表ではピンクを装いつつ、裏でこそこそとブルーを作っているという(笑)

R – こそこそと作りつつ、内心で「ブルー、流行んないかな」って思ってるんだよね(笑)

A – まさにその通りです(笑)今後またこういう個展を開催される予定はありますか??

R – やりたいね。機会があれば。

K – また個展を開催される時は、取材させてください!

R – そうだね。ぜひお願いします!

K&A – 今日はありがとうございました。

2010.5.14 update

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