No.020 : シェアリング文化を担う/大塚潤

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「シブカサ」と呼ばれる活動を展開している大塚さん。いわゆる”いいこと”を草の根的に続けているこの取り組み、受け手としてはついつい”いいことだね”という感想に留まってしまいそうなところですが、誰よりもプロジェクトのことを考えている発信側は、きっとその”いいこと”の先に何かをイメージしているはず。ある晴れた日曜日のインタビュー収録です。

大塚潤
東京都出身。
2007年、青山学院大在学中の仲間と社会起業するための集団「SOL」を創設。同12月から「シブカサプロジェクト」に取り組み、2008年12月、エコプロダクツ展に出展。

ワタベカズキ(以下K) – 「シブカサ」とはどういったプロジェクトですか??

大塚潤(以下O) – 簡単にいうと、リサイクルしたビニール傘を無料でレンタルするプロジェクト…簡単すぎるかな?(笑)大学時代から始めて、それから3年半くらい経つプロジェクトです。メンバーは全員社会人なので、活動は主に土日を有効に使って。

K – どういうシステムでレンタルされるんですか?

O – 企業から不要な傘を回収して、こちらでシブカサのシールを貼って提携店に配る。で、急な雨が降ったときに店舗からお客さんに渡す。後日それを返すとアースデイマネーっていう地域通貨を50円分もらえるサービスです。

K – 地域通貨とコラボレーションしてるのは良いですね。返す側にも得がある。

O – アースデイマネーは渋谷圏内の100店舗のカフェや美容院などで使えるんだよ。

K – この前、いわゆるゲリラ豪雨で困ったときがあったんですけど、シブカサのおかげで助かりました。渋谷から原宿あたりまで歩かなくちゃいけなくて。あのときは素晴らしい企画だと思いましたよ(笑)シブカサって、お店の人が直接手渡しで傘を貸してくれるんですよね。

O – シブカサは手渡しが原則なんだ。借りたいときは、加盟店のスタッフさんに言って借りる形になる。そこに生まれるコミュニケーションも狙いのひとつで、置いてある傘立てから取っていくような流れでは意味がないんだよね。

photo : Jun Otsuka

圧倒的に足りない雨の渋谷駅のキャパシティから生まれたプロジェクト

木村彩人(以下A) – 東京に住み始めた頃に驚いたのが、あらゆるところでビニール傘が売っていることで。駅のキオスクやコンビニはもちろん、電器屋や飲食店でも売っているのを見かけたんですよ。雨が降ってくると、在庫を取り出してきて店頭に並べますよね。そして、出した傍からどんどん売れていく。それを見て、東京はすごい街だなって(笑)

O – “傘”は国内で年間1億3千万本消費されていて、そのうち6割がビニール傘なんだよ。しかも、そのほとんどが後に廃棄されてて。例えば携帯電話なら高価なレアメタルが取れるからリサイクルする意味があるんだけど、ビニール傘は使われている素材が安価で、リサイクルする価値があまりない。日本では一番多い忘れ物が傘なのに、それをリサイクルする仕組みが整っていないっていうのが現状なんだよね。
しかも日本では少しの雨でも傘を差す文化が定着していて、その裏返しで雨が降ってきたらすぐに傘を買える環境がそこら中に整っている。

シブカサのウェブサイト

K – そういうことを知って、シブカサを思いついたと。

O – そうそう。僕は青山学院大学に通っていたから渋谷駅をよく使っていて。渋谷って駅の面積が他の都内の主要駅に比べると狭いから、急な雨が降ると入り口のあたりにものすごく人が溜まっちゃうんだよね。他のターミナル駅なら地下街が発達してるし、駅自体の面積が大きいから逃げ場所がいくらでもあるのだけれども。渋谷は地下空間があっても、圧倒的にキャパシティが足りてない。そこで、渋谷で傘を借りれたらいいよねって話していたのがシブカサ発足のきっかけなんだ。

K – そういう意味では、やはり渋谷駅にシブカサが設置してあったら最高ですよね。

O – 一度JRの渋谷駅は交渉したことがあるんだけど、断られちゃって。駅長さんとお話できたんだけどね。
実際、JRも過去に忘れ物傘を貸し出すサービスはやってはいただんだよね。返却率が悪くサービス停止されたらしいんだけど。ぜひ渋谷駅でやりたい。どなたか知り合いの方繋げて下さい(笑)

もう、傘を買わないようにしている

A – シブカサの代表なのに折り畳み傘を常に持っているという不思議(笑)

O – でしょ?(笑)これはKnirpsっていうドイツの傘メーカーの、折り畳み傘「Fiber T2 Duomatic」で。ボタンで開閉が自動で出来るのが良くてね。ただ、これにした決め手は僕がスター・ウォーズのファンで、持ち手がライトセーバーっぽかったからなんだけど(笑)

A – 折り畳むところも自動というのは珍しいですね。

O – 自動といっても途中までなんだけどね。これをいつも鞄の中に入れておいて、もう傘は買わないようにしてるよ。

K – シブカサって、そもそもみんな傘を持ち歩いていたら必要ないですもんね。

O – 本当はそうなんだよね。でもやっぱり、傘は荷物になる。この傘は丈夫で軽いから、かろうじて常に持ち歩ける。

A – シブカサというプロジェクトの結末が垣間見えるようで、面白いですね。

その街を愛してる人じゃないと長続きしない

A – シブカサの今後の目標は?

O – 僕は渋谷でとことん頑張りますよ。シブカサの加盟店もまだ43店舗だし、何万とある渋谷のお店を制覇したいね。
あと最近よく聞かれるのが「新宿とか池袋ではやらないんですか?」っていうことで。ブクロカサみたいな(笑) でも、このプロジェクトはその街を好きな人がやればよくて。僕は渋谷が好きだから渋谷でやるし、ノウハウの提供はいくらでもするし…シブカサについて隠してることはひとつもないんだよね。街ってそれぞれ雰囲気とか住む人に特徴があって、その街を愛してる人がやらないと長続きしなくて。よそから地域活性化プロデューサーみたいな人を連れてくるより、その街を好きな人が主役になった方が理想的だな。

K – プログラムの世界でいう”オープンソース”ですね。

O – オープンソースでやっていきたいね。

A – シブカサって世間的に”いいこと”を実践しているプロジェクトですよね。”いいこと”をしているプロジェクトって、元々目指しているところが誰の反発に遭うこともないので、逆にもっと本質的な核の議論が抜け落ちてしまいがちというイメージがあって。せっかくなのでその辺りもお聞きできればと思います。

O – うん。そもそも”シブカサ”はシェアリング文化を担う一つの手段としてあってほしいと願っていて。売れることが「正」で皆が右向け右で物をたくさん作った時代があったじゃん? 今もまだその節はあるけど、少しずつ変化しているのは間違いなくて。
製造側は「売る」という根本的目的に加えて、売った後、消費された後の物の在り方まで考え始めるところが増え始めていて。消費者側も当然、物に対する考え方が変化し始めた。どうしたら持続し続けられるか、みんなが真剣に考え始めたんだ。その思考の出口がビジネス戦略なのか、エコなのか、エゴなのか、人によって色々あれど、なんかワクワクするじゃない??

K – 劇的な変化が”面白い”と。

O – 売る側、買う側の価値観が変化し始めたのがまさに昨今。ではこの空気感を含んだ社会はどこへ行くのか? 僕達は”消費される事が物の宿命”でなくて、”使い続けられる事が宿命”だという社会が理想だと思っていて。そのいわゆる循環型社会を引率する存在にシブカサがなれたら素敵だなと思って、続けています。

A – 世界規模では、逆に今までにない量感で大量消費社会を迎えていることも事実ですよね。例えばコンピュータの基板が、今は安いものなら板チョコほどの値段で買えたりして…。その背後には世界規模で同じものが大量に買われ、捨てられているという事実があると思います。
今日はインタビューにご協力して頂いてありがとうございました。

2010.9.19 update

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