No.011 : モノとの付き合い方を学ぶ(前編)/大井悠

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ひとつの器に数万円なんて、なかなか出せるものではありません。しかし消費ではないモノとの関わり方をそこから教わったという大井さんにとって、その数万円は”気づき”に対して支払った授業料の様なものなのでしょう。前後編に分けて、彼のお気に入りを伺ってみました。
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大井悠
鎌倉出身。都内印刷物関連会社に勤務中。

ワタベカズキ(以下K) – では自己紹介をお願いします!

大井悠(以下O) – 大井悠(おおい・ゆたか)です。生まれは鎌倉で、今は印刷物関連会社で働いています。以前ここに登場した、池田君とは同期です。元々、本が好きだったので出版社なんかも受けていました。最近は本が家の本棚に入り切らなくなってきて…(笑)今は本とは関係ない、工業メーカー向けの紙を扱う部署にいます。

赤木明登 / 輪島塗

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木村彩人(以下A) – さて、今日は何を持ってきてくれたのでしょうか?

O – まず最初に輪島塗の塗師の赤木明登さんが作った、漆塗りのお椀を。このお椀に出会ったのは、たまたま大学のゼミの後輩のお父さんが赤木さんだったからなんだけど、大学生活最後の春休みのバイト代をつぎ込んで買って。

K – 本当に綺麗な色してるね。

O – 実はこの器って、最初こういう色をしていなくて。漆って水分に触れると固まるっていう面白い性質があるから、使ってるうちに水分が与えられて、色も艶も良くなってく。使い始めて半年だけど、もう変わってきてるんだよね。

K – 赤木さんの器は輪島でしか買えないの?

O – いや、これを買ったのは西麻布にある桃居っていうギャラリーで。実はさっき待ち合わせに遅刻しそうになったのは、そこに寄って「この子を紹介してきます」って報告してきたから(笑)学生時代に買ったからちょっと高いかなあとも思ったんだけど、一生使えるからいいかなって。漆塗りの器って、ちょっと欠けたりしても職人さんが無料で修理してくれるので。人によっては、食器に1万円、2万円出すっていうのに抵抗がある人もいるんだろうけど、作るのに半年くらいかかるんだよね。漆を何重にも何重にも塗ってくから。乾かすのもドライヤーでってわけにはいかないし(笑)

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A – 美大の学生が課題の提出に間に合わないときにやる方法だ(笑)いつもこのお椀では何を食べてるの?

O – 毎朝このお椀でみそ汁を飲んで、「今日も一日頑張るか」って会社に(笑)

K – いいね!このお椀でみそ汁とか豚汁を食べてみたい(笑)こういうお金の使い方が出来る感性って大事だよね。長い目で見たら、得をするのはそういう人だと思う。精神的な満足感とかも含めて。

モノとの付き合い方を学ぶ

O – 良く考えてみたら、今までモノとの付き合い方って学んでこなかったなって思って。器に興味を持ったきっかけは、それを考え直してみたいからっていうのもあったのね。ただ単に消費するんじゃなくて、使うことによって自分の感性や豊かになるものに、自分はお金が使いたいなって。この器は毎日表情が変わるから飽きないしね。光の当たり方でも見え方が全然違うから、例えば今ここは蛍光灯の白い光の下だけど、黄色っぽいの照明の下だとまた違った色合いになる。実は作り手の赤木さんは、現代の家の光が明るくなっているっていうのも考えた上で、ちょっとマットな色にしてるんだよね。今の人たちが、どういう環境で暮らしてるかっていうのも考慮してて。

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A – あ、本当だ。漆塗りの器ってもっと光沢があるイメージだよね。

O – 感性や考えを豊かにするってことに前から興味があって。人のそういう部分に影響を与えることに、個人的に関わっていたいなって思ってたんだよね。でも、いざ仕事を始めてみたら、自分の生活にゆっくり食事を楽しんだりする余裕がなくなってきて。そのバランスを取るために、僕にとって器って大事なものなんだよね。「食」って衣食住にも、三大欲にも入ってるでしょ。

A – 器にこだわることで、その上に載せるものも意識するよね。このお椀でインスタントのみそ汁はちょっと違うじゃん?(笑)その意識を少しずつ積み重ねていくと、恐らくさっき言ってたように、生涯を通してものすごい得をするんだろうね。そういうアクションとして、器にこだわるっていうのは良いことなのかも。

(後編に続く)

2009.11.18 update

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