No.012 : 人間だけど、人間としての情報が少ない状態/Olga

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独自の考え方で表現を展開しているファッションブランド”etw-Vonneguet”。あまりにも特異なアウトプットを見て、その裏側にどういった考えがあるのか、もしくは何か別の衝動なのか、私たちは気になったのです。
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Olga
海外の大学院にて数年間ファッションとテクノロジーに関する研究、作品制作をくり返し修士号を優秀な成績で取得、在学中にファッションブランド{-ish}を立ち上げ。
卒業後、さらに独学で自身の理論を展開、近年はCGモデリングソフト会社と協力しながら新しいファッションの視点と方法論を独自に展開して行く。
2009年からetw-Vonneguet(エトヴァス・ボネゲ)にブランド名を変更。エトヴァス・ボネゲ代表兼デザイナーを務める。年齢実名その他詳細経歴ともに非公開。

木村彩人(以下A) – 今日は、ファッションブランド「etw-Vonneguet(エトヴァス・ボネゲ)」代表兼デザイナーのOlgaさんに来ていただきました!

ワタベカズキ(以下K) – 初の匿名ゲストですね…僕たちは見えてますけども(笑)Olgaさんは海外の大学院でファッションを学ばれてたんですよね。

Olga(以下O) – ロンドンに2年くらいいました。在学中に「{-ish}(イッシュ)」っていうブランドを立ち上げて、今年「etw-Vonneguet」に改名したところです。あとはサイトのプロフィールを書き写してもらえれば(笑)

A – 左に書き写しました(笑)ボネゲはどんな思考から服が生まれるブランドなんですか?

O – 「気持ち悪い」かなあ。前やってたイッシュのときはもっと爽やかだったんだけど(笑)この前、街中でゲリラショーをしたんだけど、「気持ち悪い」とか「マジ怖い」とか言われるのね。でも私はそれを期待してたからそれで良かった。そうじゃないと印象に残らないし、そういうものを作りたいからね。可愛い服は世の中にたくさんあるし。 

A – 表現ってどれもそうだと思うんですけど、全部がパーフェクトに綺麗だと成立しなかったりするんですよね。忘れられやすかったり。それを覆すワンポイントをボネゲ風に言うと、「気持ち悪い」になるんでしょうか。ちなみにOlgaさんがものを作るときって、考えることが多いですか?それとももっと感覚的なものか。

O – 自分の生活そのものが丸出しになる感じかな。フラストレーションがすごい溜まってると、そういう作品になっちゃうし…基本的にフラストレーションを感じない作品ってあまりないんだけど。私は「ハッピーで超楽しくてカワイイ!」とかっていう服を作れないから、フラストレーションそのものが根源かな。だからそこは感覚的かも。でも、生地をいくらで買って、いくらで売って、どのくらいで一反使うかっていう数字の部分は、商人っぽいところだよね。

K – それは代表で、かつデザイナーだから両立しなきゃいけないところでもあるんですよね。そこにジレンマはありませんか?

O – ジレンマというより、瓶の中に水と油が入ってる感じかな。混ざってたり、はっきり分かれてたり。やってることによって変わるよね。

「みんな死んじゃえ」がテーマだった

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A – 今日は持ってきていただいたものは?

O – 今日は、この前のゲリラショーの時に被っていたマスクを。これは最新のコレクションの一部で。私のコレクションはイッシュのときも、ボネゲでもモデルに顔がないのよ。うちが提案する服っていうのは、顔がない状態じゃないと完成じゃないんだよね。顔の情報量って、服が負けちゃうくらいあるから。別の人が同じ服を着たときに違って見えてしまうのは、その人がすでに持っているヒストリーとか雰囲気が服と混ざり合っちゃうからでしょ。それは良いことなんだけど、ボネゲが最初に服を見せるときにはいらないなって。ない方が面白いでしょ?(笑)

K – はい(笑)具体的にこの形が出てきたのは「葬送」っていうコレクションの名前から?

O – うん、最初は司祭みたいなイメージがずっとあって。「葬送」ってコンセプトにしてるけど、本当は「みんな死んじゃえ」がテーマだったんだよね。それをリマインドさせる形って、なんだろうって。例えば、日本人は四角に帯があるだけで葬式を連想できるでしょ。で、いろんな国のお葬式とかのコスチュームを見てて、これが良いなあって。見てすぐ決めたよ。

K – ショーの一環としてボネゲのウェブサイトに掲載されていた「あなたの葬り去りたいものは何ですか?」っていうメッセージには何か重要な意味が?

O – あれはすごい実験的な活動で。最初は葬り去りたいものを募集してたのね。回答は内面的な葬り去りたいものの方が多くて、他人を中傷するようなものは少なかったんだけど。で、本当はそれをいっぱい集めて、服にプリントして売ろうと思ってたの。でも、人が葬り去りたいものが書いてあるTシャツを、自分が着たいと思うかって考えたら微妙なとこで。
あと、例えば個人名が投稿されてきたとして、「個人名はうちは受け付けられないんです」って、つまらないことを言いたくなかったの。葬りたいものに制限なんてないから、はじめから偽善的に枠を作るなんて良くないって思っちゃったのね。でも、何でも受け入れちゃったら商品としてアウトプットするときに、どうカバーすれば良いのかわからなくて。みんなの言葉を救えない状態になっちゃうのは、どうなのかなって。本当はやっちゃいたいんだけどね(笑)

A – 年齢が増えるともちろんみんな大人にはなってくんですけど、「どうしても今こんなことをしたい」という衝動って常にありますよね。それに対する対処法として、ここにいる3人は何かを作ることで発散できるところがあるけど、そういう手段を持たない人ってどうしてるのかなって思うんです。例えば僕の世代なら、入ったばかりの会社の愚痴をお酒を飲みながら聞いたりとか。葬り去りたいものって、そういうところから出てくるイメージかも。一般的には。

K – 今の時代、入社して一年目でいきなり「仕事合わないから、辞めます」ってわけにもいかないしね。下手したら定年まで働く可能性もあるわけでしょ。昔は雇用に対して安心感があったから良かったけど、今はそれもないのに、ストレスは変わらずあるっていう状態だもんね。葬り去りたいものが沢山ありそう。

何百年、何千年も続くようにしていきたい

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A – ボネゲの服って、このマスク以外は普通に着れる感じで、むしろ可愛らしかったりしますよね。でも、このマスクを被ると、そういう単純な形容詞を全部壊してくれる。リセットボタンみたいな役割でしょうか。

K – (マスクを被ってみて)視界が面白いですね。向こうから見えない感覚って不思議です。

O – 人間だけど、人間としての情報が少ない状態ってすごい不安になるんだよね。

A – ちなみにボネゲの服はどういうところで取り扱われていますか?

O – サイト上のショップは工事中でして。実店舗では例えば「XANADU(ザナドゥ)」っていう原宿のセレクトショップに置かれる予定です。本当はこのマスクは売り物にするつもりはなかったんだけど、そのショップのオーナーさんが「これがすごくウチに合う」って言ってくれて。今どきエッジの効いた服を、ドメスティックだけで揃えてる店舗ってなかなかないのよ。母体が大きいセレクトショップは売れることも大事だから、世の中の流れに沿っていってしまっていて。

K – 確かに、これを置けるお店は…僕の知ってるお店では一軒もないですね(笑)

O – 私も最初はびっくりして。こいつはカタログの最後の方にあったんだけど、最初は洋服を選んでて、これを見たら「これが一番ウチの店に合ってる」って(笑)

A – ボネゲの今後の展開は?

O – まずは次のコレクションかな。あと、そういうことを聞かれたら必ず言うのが、継続することだね。次も良い服を作って、面白い提案をして、また次も面白いことがやれてっていうのを、私が死んでも何百年、何千年も続くようにしていきたい。

2009.12.15 update

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